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篠田 晴男 教授
Haruo Shinoda,Ph.D![]()
なんらかの発達上の困難さが背景にあり、悪戦苦闘を経験される方々の支援のありかたを探求しています。

いずれの方々も、育ちのなかで、たくさんの失敗を経験し、時々乗り越えたときに得られる成功の瞬間を糧に自立への道を進んでおられることと思います。まさに、発達とはこのように前進もあれば後退や停滞もあるダイナミックな過程で、光と影が交錯しつつ、成熟への時は経過していきます。近年の研究成果から、こうした発達の途上で、困難さが想定される脳機能の問題なども一部明らかになってきました。
しかし、まだまだ、未知のことがたくさんあります。もっとも大切なことは、育ちの困難さになんらかの根拠が想定される場合、多くの失敗経験が積み重なって、自身も養育者も必要以上につらさを抱えてしまうという現状があります。まさに、“生きにくさ”が生じてしまうという問題です。一方で、適切なチェックに基づき、自己理解を深めつつ、周囲の理解を得ていくことで、長所活用型の肯定的な生き方に近づくこともできます。正しい理解と適切な支援について、事実に基づいた検証を探求したいものです。そして、普段の自分の失敗にも、次に必ずつながることがあると考えて、勇気をもって挑戦する姿勢を大切にしたいものですね。
現在の研究のテーマ
- 発達に困難さのある方々の理解と支援に関する研究
どんな研究なの?
対象は、発達に困難さのある方々。さらに絞り込むと、発達障害のある、あるいは疑われる方々を対象としています。生まれる前から、老年期まで発達とともに様々な問題が想定されますが。こうした問題の理解には、心の問題に限らず、その神経学的な基盤としての身体の問題の理解も不可欠で、医学的な知識も欠かせないものとなっています。実際の支援では、チーム支援としての様々な人とのつながり、支援機器の活用など、極めて幅の広い知識と人間関係の構築が求められてきます。領域も、医学・教育・福祉をはじめ、あらゆる領域と接点をもつ、総合支援科学といってもよいものです。当然、臨床心理学で扱う様々な精神障害の知識も不可欠で、多くは重ね着のごとくあらゆる問題を経験していることも知られるようになりました。
近年、注力しているのは、青年期・成人期、特に高等教育としての仕上げにあたる大学での発達障害のある、あるいは疑われる学生の理解と支援についての研究です。少し以前では、学齢期で、“ちょっと気になる子どもたち”といういわれかたもされました。しかし、青年期では、問題が複雑化しがちで、At risk studentsという呼び名で、問題が起きる前に、予防的に対応していくことで、学生生活で成功体験を得られるようにと支援のありかたも発展しつつあります。国内でも、最近になり、複数の大学で、独自の支援が試みられるなど、発展中の臨床実践研究ともいえます。
主な担当科目 
- 障害児心理学
- 生理心理学
障害児心理学
発達障害は時間を多く割いていますが、障害全般にわたり、心理学の視点から理解と援助に関する課題を論じています。どんどん知見が変化するところもあり、時代に応じた、あるいは変化を見据えた授業をどう提供できるか、毎回思案しています。自分の身の回りで起きている出来事(例えば、障害者支援をめぐる行政の対応やことばの問題など)にも、関心を持って眺めてみることをお勧めします。
生理心理学
基礎的な知識は欠かせません。物理、化学、生物、数学・・・。たぶん、一番厄介な科目のひとつでしょう。とはいえ、まさにつら楽しい、具体的な実験供覧や映像、体験などもとりあげて、直感的に把握することも大切と考えます。誰もが備えている身体、脳を基本に、心理現象の背景にある神経基盤などを考えます。脳のめぐる研究の進展は劇的ともいえますが、神経神話におどらされることなく、自分の目で見て、確かめて理解することです。そして、発達障害・精神障害などの障害の背景にある、神経基盤についても理解を深めます。
臨床心理学科の教員の担当科目は、2010年度のカリキュラム情報です。
ゼミ
発達とその困難さを中心に、様々な問題を扱っています。ボランティア体験の豊かな学生が少なくないのも、特徴といえます。そこで、より専門的なボランティア支援を行えるよう、一部の実習を含めて、前期は基礎的理解と対応を中心に、後期は障害特性の検査や支援の方法論についても最低限の理解をめざして取り組んでいます。
とはいえ、ゼミでは卒論につながる文献購読や研究法への理解は必須ですので、各自レポートを発表し、意見交換をしています。ゼミ生には、教育、医療、福祉、行政などの職場で、すでに長年の実績を持った社会人の学生も混じって、お互いによい刺激となっていることもありまし、時には白熱した議論となることもあります。
ゼミ生達は、このような議論に参加することで、一見何気ない発達の各段階で、実に多様な問題に直面していることも気づき、人間について考える重要な視点を獲得して巣立っています。そして、現代の青年において、おそらく難しい課題のひとつともいえる、力を合わせるという作業を実習やレポート作成の体験から得て、時にかけがえのないものとなっているようです。
また、先輩・後輩の関係も、大切にしています。職業選択において、先輩方のナマの体験や生き方は、大きなヒントになってもいるようです。
ゼミ卒業生たちの進路
①進学(臨床心理学、特別支援教育、応用心理学領域他)
本学大学院、国立大大学院、他私立大大学院など、臨床心理学領域に限らず、幅広く発達支援関連領域へ進学しています。国立大への進学者も多く、修士課程終了後、再び本学の博士課程で研鑽を積んでいる学生もいます。
②専門職としての就職
第一線の障害児・者福祉施設、児童擁護施設等、あるいは公的機関や病院、薬品会社、警察等で、より専門的な仕事についている方も多数います。
③一般職としての就職
障害のある方の就労を考える上でも、就労経験を重視しています。様々な業種に幅広く挑戦し、同窓会では、多彩な背景を持つ仲間が集まっての意見交換も楽しみとなっています。アーティスト志望者もいたりします。
学会活動・社会的活動
- 日本心理学会、日本臨床心理学会といった心理学、臨床心理学の学会から、日本LD学会、日本特殊教育学会、日本教育心理学会、日本学校心理学会など、発達障害の教育に造詣の深い学会、日本児童・青年精神医学会や日本小児神経学会など、医学系の学会、あるいは、日本生理心理学会や日本臨床神経生理学会などの認知神経科学に関連した学会から応用心理関係、産業臨床関係の学会まで幅広く参画してきました。代議員、編集委員、研究委員会委員、監事、等を仰せつかった際には、担当もしています。
- 地域支援では、茨城県を主に、神奈川県など関東地域での特別支援関連の仕事をしてきました。研究協力では、国立特別支援教育総合研究所、国立精神・神経センター精神保健研究所、国立生育医療センター、等の機関、および筑波大、茨城大、信州大など他大学との研究交流も大切にし、学生のみなさんが、対外的な体験をつむ機会も提供してきました。
- さらに、基礎研究や臨床支援について、ドイツ・スイスの大学や機関、米国の大学や機関とも協同研究や意見交換を通して、知見を深めつつ、より適切な支援のありかたを探っています。
最近の研究成果
おもに、臨床と基礎、そして最近の実践・研究の端緒となった成果を、3点例示します。
- 発達障害のある学生支援についての啓蒙書(臨床実践)
『発達障害のある学生支援ガイドブック』(ジアース教育新社) - 発達障害のある学生支援についての論文(臨床心理・特別支援)
ADHD を有する学生への医療と連携した心理教育的特別支援(精神科治療学) - 視覚的注意に関連した脳における機能的変化についての論文(認知神経科学)
Topographic ERP changes due to displacements of visuo-spatial attention(ELSEVIER)
新入生へメッセージ
学びは、頭だけでなく、全身を使って、行うものです。様々な人々とふれあい、生き物、そしてひとの多様性の素晴らしさを理解して欲しいと思います。違いを認め合う勇気と、自分の特徴の肯定的な理解は、車の両輪です。そして、学びは、楽しいだけでなく、学ぶ大変さ、つらさがあるからこそ、身につくものです。可能性に挑戦しつつ、できないからこそやり続けるのだと自らを奮い立たせて欲しいと願っています。
その他:そもそも、ご自身が「心理学」に進むことになったきっかけ、理由は?
ヒューマンケアの領域に関心はありました。学生時代、“落ちこぼれ”ということばがあって、“落ちこぼされたのでは?”と懐疑的な印象を持っていました。当時の関心が、学習障害といった発達障害への関心と重なった時に、縁というものを感じました。素朴な関心は、学生の特権かもしれませんね。そして、友人が興味をもっていた心理学を横から学ぶうちに、心理学を学ぶことの幸せと広さ・深さ・新しさにまだまだ未熟な自分であると感じつつ今日に到ります。

