- ホーム
- 臨床心理学科:教員紹介
- 山本 誠一 教授
山本 誠一 教授
Seiichi Yamamoto![]()
自分の「やっかいな特性」に潜む可能性を考える

子ども時代や青年期に(ときには成人後も)変わった子ども、こだわりすぎる子ども、不安が強すぎる人などと言われたり、自分自身でもそんな自分が嫌になったり、ときには実際に不適応となったり、「異常者」、「病者」ではないかとさえ疑われた人が、その後その問題だと思われていた特性や性格が逆に有効に働いて、個人的に成功し自己実現や個性化を進められただけでなく、結果的に社会的にも人を勇気づけ癒すようなものを生み出したり、人間の幸せに寄与する学問や科学技術の進歩につながる発明発見につながっていくということは、昔から少なからずあるものです。
しかし、こういうことは偶然だとか、運が良かっただけなどと言われ、その意味について真剣に取り上げ検討されることは少なかったように思われます。
わたしは、これまでこのような,個人の一見否定的と思われる特性のその人の生涯の個性化プロセスにおける働きやあり方の不思議さに興味を持ち、主に「不安」というテーマから検討を進めてきました。
私たちは、人生のなかで苦しいことや認めたくないことがあると、ただそのことをネガティブなものとだけ捉え、早く消し去ろう、直そう、変えてしまおうと、拙速に動きがちです。
それでうまくいけば良いのですが、なかなかうまくいかず思い悩んでしまうことも決して少なくありません。こんなときはまず、一見嫌なもの、不幸なこと、と見える自分の特性や個性、生活環境,不運なこと等に潜む様々な「意味」について、余裕のない「自分」からいったん離れ、少しだけ客観的になって、いろいろ考えてみるのも一つの方法ではないでしょうか。
まずはそれを考えるときに有効な,様々の臨床心理学の理論,特に精神分析的な考えについて、ご一緒に勉強できたらと思います。
研究のテーマ
- 青年期の不安・傷つきと個性化の諸問題に関する臨床心理学的なアプローチ
- 分析心理学に基づく心理療法論やその視点から見た諸問題の検討
どんな研究なの?
子どもから大人へと成長して行くプロセスに、青年期という大切な時期があります。前半の頃の思春期などは昆虫の「蛹」(さなぎ)の段階に喩えられたりするほど、目に見えない内面の変化は激しいものと考えられています。また高校を卒業し大学生くらいの年齢になると、今度は近い将来に社会に出る「自分」が意識され,そこで「自分とは何ものか」「これから何をしていくのか」等といった、アイデンティティの模索が始まります。
このように、子どもでもなく,かといってまだ一人前の成人でもない青年は、まだ親に頼っていたい、守られていたい気持ち(依存)と、逆にもう一人で独立してやってみたい気持ち(独立)の両方をもって葛藤的(一部は解離的)であり、不安定な心境だろうと考えられています。 親や家族、そして友人、異性との人間関係を強く求める一方、今度はその人間関係によって傷つきやすくなる、という難しさ、生きにくさも指摘されています。
このように、青年期は人によってその意識に程度に差こそあれ「不安の時期」となり、うまく適応できている人でさえ内心不安なのですから、もともと不安傾向の強い人や、ちょっと変わった特性を持つ人は、毎日の学校での友人との生活や、家族との関係がしんどく、苦しくなって悩んでしまうこともあるだろうと思われます。
私はこれまで、青年期の人の不安にも、ネガティブな面ばかりでなく、その人の人格を成長に導き、結果的によりその人らしくなるような働きを持つ「不安」もあるのではないかと考え、そういう「不安」に関する研究を進めてきました。
さらにその考え方を基礎づけるユングの分析心理学理論や心理療法の観点を踏まえながら、(箱庭なども用いて)「こころ」の傷つきを抱えた方への分析心理学的心理療法、カウンセリングを行い、そうした経験や諸知見をもとに、青年期を中心とする現代の「こころ」の諸問題理解のための検討を行っています。
主な担当科目 
- 臨床心理学概論
- 学校臨床心理学研究
- 臨床心理学演習
臨床心理学概論
人間の「こころ」の不可思議さを探求する心理学の重要な一分野である「臨床心理学」について, 導入としてその全体像の一部を概観し, そこに通底する「臨床心理学」の基本的なものの見方やその際の態度などを心理臨床現場での実践的な要素を含ませながら学び,「臨床心理学」に慣れ親しむことを目的としています。自己理解を深めるよう、紹介する臨床心理学の知識を自分の経験に当てはめて考えるような主体的な受講態度が期待されます。
学校臨床心理学研究
児童期から思春期青年期の子どもにとり, 学校は友人などとの人間関係の中で「こころ」が出来上がっていく場であり、多くの「こころ」に関する諸問題もそこから生じていると考えられます。 この「こころ」の諸問題の探求のためには、まず人間の「こころ」が、どのように形成され、乳幼児期をはじめとする各段階でどのような問題が生じやすいのか等の発達臨床心理学的な知見を学ぶことが重要です。それを踏まえた上で子どもに有効な心理療法や学校心理臨床に関する最近の知見や研究を学んでいくことが必要とされます。 学校臨床心理学に関連する興味のある研究論文を選び、発表する機会も想定しています。
臨床心理学科の教員の担当科目は、2010年度のカリキュラム情報です。
ゼミ(3年次の「臨床心理学演習」、4年次の「卒業研究・卒業論文」)
「自分で考える力」「論理的に考える力」をつけることを基本的なねらいとしています。さらに臨床心理学の点からは「相手の立場になって聴く力(他者の考えに開かれる力)」およびそれを踏まえ「他者と対話できる力」の育成にまでつながることも期待されます。
具体的には、臨床心理学をベースにした青年心理学・人格心理学・分析心理学の領域における不安・不適応, 自己理解, 個性化(自己実現, 生き方) 等のテーマに関して, 専門的な文献や研究論文から各自関心のあるものを選んで、深く読み込み、レジュメにまとめ、発表(その際, それを選んだ「動機」や自身の意見・疑問点, 物足りない点やどう発展させたいか等も含む)し、他の受講生からの質問に応答してもらいます。
こうしてテーマ選定の模索を進める過程で学術的論理的な思考力やレポート作成力も高めていき、4年次の卒論作成へとつなげていきます。ゼミでは、プロセス(発表準備にどれだけ自分自身のエネルギーをかけたか等)も重視され、ここでもパーソナルな自分自身と関係づけて学び, 結果的に自己理解・他者理解がより深まることをねらいとします。(条件がかなえば、箱庭制作の簡易体験の機会を設けることもあります。)
卒業後の進路
さらに専門的に学ぶために大学院へ進学する方、一般企業に就職する方など、さまざまです。
主な学会活動・社会的活動
- 日本心理臨床学会
- 日本青年心理学会
- 日本ユング心理学会
- 日本カウンセリング学会
- 日本箱庭療法学会
- 日本臨床心理士会会員( 臨床心理士 )
その他
多様な心理臨床の現場での実践経験も有しています。
最近の主な研究成果
- 「心理療法における〈想像力〉による元型的布置」(人間科学研究第9号)
- 「田中健夫論文〈大学生の相談事例から見た修学上の行き詰まりの様相〉へのコメント」(青年心理学研究第20号)

